クックチルとクックフリーズとは?
それぞれの特徴を紹介。
これまで経験や勘で運用されていた調理技術や調理場の管理をマニュアル化・システム化することによって、計画的に調理・提供を行う「新調理システム」は、病院・高齢者施設、ホテル・レストランなど、さまざまな調理現場で導入されています。今回は、ともに新調理システムの「クックチル」と「クックフリーズ」の特徴についてご紹介します。
「クックチル」と「クックフリーズ」、それぞれの定義は?
まず、「クックチル」とは、加熱調理後30分以内に冷却を開始し、90分以内に中心温度3℃以下まで急速冷却をして、0〜3℃で衛生的に保存しておき、食事を提供するタイミングで最終加熱(再加熱)する調理システムです。調理場での作業の平準化ができ、食品衛生管理を徹底することで、計画生産ができる点が評価され、大量調理の現場でも多く導入されています。
一方で、「クックフリーズ」とは、「フリーズ」という名前通り「凍結」する点が特徴です。具体的には、加熱調理した料理の凍結を30分以内に開始して、90分以内に中心温度−5℃以下まで、最終的には−18℃まで急速凍結し、冷凍保存しておいて、食事を提供するタイミングで最終加熱(再加熱)する調理システムです。
「クックチル」は冷却して冷蔵保存する手法、「クックフリーズ」は凍結して冷凍保存するという点で違いがあります。
「クックチル」と「クックフリーズ」、それぞれの共通点と違いは?
- 「クックチル」と「クックフリーズ」の共通点
- 冷却(0〜3℃まで冷却)または冷凍(−18℃以下)により、調理と提供を完全に分離できる。
- 加熱後の食品は危険温度帯を短時間に通過させ、細菌が増殖しづらい温度帯で冷蔵または冷凍保存させるため、細菌増殖の危険性が低くすることができる。
- 事前調理が可能となり、提供時は最終加熱(再加熱)して盛り付けを行うだけであるため、「クックサーブ」に比べて、ピーク時のスタッフの出勤人数を減らすことができる。
- 提供時は盛り付けを行うだけであるため、作業時間が短縮できて、なるべく早くお客様に料理を提供できる。
- 「クックチル」と「クックフリーズ」の異なる点
●保存期間- 「クックチル」:製造日を含め3℃以下保存で5日間
- 「クックフリーズ」:食品のタイプによっても異なるが、−18℃以下保存で最大8週間程度/「クックチル」よりさらに長い期間での計画生産が可能になり、食材のロスを防ぎやすい。また、配送時の温度管理もしやすい。
●味
- 「クックチル」:食材の細胞が劣化しづらく、美味しいまま提供できる。
- 「クックフリーズ」:凍結の方法や食材によっては、冷凍による組織破壊が起こりやすく、素材本来の美味しさや食感が損なわれることがある。
クックフリーズの技術も進歩、食材の特性に応じて使い分けを
クックチル発祥の欧州において、効率的に調理を行うために当初使われ始めた方法は、クックチルではなくクックフリーズでした。しかし、野菜などは冷凍による組織破壊が起こりやすく、食感や美味しさが損なわれやすいということで、クックチルが定着していったという背景があります。ただ、近年は急速凍結の技術や、解凍時に食材の細胞破壊を防ぐ技術が進んでおり、冷凍しても美味しさが変わらない食材も増えてきたことで、保存期間の長いクックフリーズの活用も進んでいます。
大量調理現場において、冷却・凍結しておくことで事前調理を可能にできることは、食品の安全性確保の面でも、作業効率化の面でも役立ち、食材ロスの低減にもつながります。食材の特性によってクックチルとクックフリーズを使い分けて、計画的な調理を実現しましょう。