ヤマキイチ商店様岩手が誇る「泳ぐホタテ」が、世界を目指して泳ぎ出す

2022年、岩手県釜石市に泳ぐホタテで全国にファンを持つヤマキイチ商店様の新たな店舗兼加工場『与助』がオープンしました。ここでは注文に応じて店内の水槽から取り出し、オープンキッチンで調理された浜焼きやお刺身などで味わうことができる店舗と、その奥の加工場で作られた加工品を購入することができます。

品質へのこだわり、圧倒的な鮮度で、三陸海産物の魅力を伝える

ヤマキイチ商店様の創業は1989年、わかめの販売からスタートさせました。あるとき、浜で余ったホタテの販売を頼まれたのを機に、このおいしさを損なうことなく届けたいという思いが生まれ、発送方法を検討。試行錯誤の末、殻付きの生きたままの状態でお届けする泳ぐホタテが誕生しました。
順調にファンを増やしていましたが、2011年、東日本大震災で店舗・家屋が全壊。「震災を経験して、お客様から無償の愛を感じました。いただいた励ましの言葉にしっかりとお応えするには、何よりも最高品質の商品をお届けし続けること」と専務取締役である君ヶ洞剛一様がかたってくれました。
震災後は通信販売に力を入れるとともに、飲食店などの業務筋を通信販売に次ぐ柱に育てようと取り組んでいましたが、突然のコロナ禍に。『与助』の誕生は、このような不測の事態に備える思いと、お客様への思いが込められていました。

設計段階からトータルに依頼

まずは馴染みのあるお客様を大切にとの思いから、大々的なオープン告知はあえてせず、のれんが上がっているのを見て訪ねて来られる方をお迎えされています。「ありがたいことに通信販売で全国にお客様がいてくださって、友達のような感覚でお手紙のやりとりをする方も大勢おられます」。その言葉通り、店内の壁にはお客様から届いた手紙が飾られ、あたたかな雰囲気に満ちています。「以前から直売所はあったんですが、遠方からわざわざ買いに来てくださっても立ち話しかできなくて。申し訳ないなとずっと思っていたんです」。お客様をもてなす飲食スペースを作りたい、また、泳ぐホタテを活かしてこだわりのある加工品を作りたい。それが今回のフクシマガリレイへのご依頼でした。
ヤマキイチ商店様とフクシマガリレイの出会いは東日本大震災の前まで遡ります。当時は泳ぐホタテで冷凍貝柱を作ろうと検討されており、最大−40℃で急速凍結を行う〈ブラストチラー/ショックフリーザー（※以下、ブラストチラー）〉をご提案させていただいたのがはじまりでした。
新たな店舗では、お客様と過ごす時間を大事にしたいと考える剛一様。「お客様をおもてなしするために設けた場所で、私たちが作業で手一杯だったら本末転倒。だからこそ、最先端の機器を導入して作業を効率化したいと思いました」。

設計、機器、レシピ開発まで長期的な意図を汲む

少しでも多くゆとりを感じていただけるよう、動線に配慮した設計、作業負担を削減する機器をご提案。「〈ブラストチラー〉は自動洗浄機能付タイプがあって進化を感じました。これまで洗浄にかけていた時間を他に回せるし、衛生的で安心です」。その他、季節に合わせて温度帯を変えることができる〈ワイドレンジ冷凍冷蔵庫〉や、〈業務用冷凍冷蔵庫〉〈平型オープンショーケース〉〈スチームコンベクションオーブン（※以下、スチコン）〉をご提案。
また、HACCPに沿った衛生管理が行えるよう〈HACCP ExAround衛生管理プラン〉を導入。現状は専用タブレットに入力して記録するタイプですが、ゆくゆくは機器の温度や各工程の記録をパソコンで一元管理できる〈HACCPマスターV3〉をご希望とのことで、将来、機器の管理に必要となる配線も整備しました。「長期的な意図をくんでサポートしてもらえてありがたいです。」

新たな加工品作りに関しては、東京浅草橋にあるショールームにて、ガリレイの管理栄養士がサポート。ご要望をお聞きして開発に取り組んでおり、現在は冷凍の泳ぐホタテのグラタンや、ステーキを試作中です。さらに今後は、海外向けに冷凍貝柱の開発にも取り組んでいきたいとのこと。「生鮮の泳ぐホタテは鮮度で差別化できるんですが、冷凍貝柱も特徴を出していきたい。どの国に輸出するかによって基準も違ってくるので勉強しながら、ガリレイさんに相談もしながら実践していきます」。目指すは、岩手のブランド力を高めながら海外に評価されるもの。「商品作りは設備だけでなく、人の力で差が出る。ガリレイさんにはそれを可能にする人材がおられます」。

いただいたご縁をあたためながら、1000年かかっても、三陸をあるべき姿に

「与助はお客様への思いから生まれたので、そういう意味ではお客様に作っていただいた空間」と剛一様。「こうして新しいことにチャレンジする舞台をいただけたのも、先人たちの苦労や努力があってこそ。じゃあ私たちは次の世代のために何ができるだろうと考えたら、私はグローバル展開だと思うんです。グローバルとローカルを合わせたグローカルという言葉が好きなんですけど、生まれ育った地元を大事に、誇りと愛着を持ちながら、国内外に岩手の価値を伝え続け、次の世代へつないでいきたい。今はホップステップジャンプでいえばホップの段階です」。冷凍貝柱の輸出には、そんな思いが込められていました。泳ぐホタテをはじめ、三陸海産物を通して岩手の価値を伝えていけるよう、これからもサポートさせていただきます。