「クックチル」とは?

「新調理システム」の調理・保存法の一つに、「クックチル」があります。簡単にご説明すると、調理した料理を一旦冷却して保存しておき、提供する時間に合わせて再度加熱するというものです。クックチルとは何なのか、なぜ注目されているのかについてあらためて解説します。
クックチルの定義と従来の食事提供の課題
「クックチル」とは、加熱調理後90分以内に中心温度3℃以下まで急速冷却をして、0〜3℃で衛生的に保管しておき、食事を提供するタイミングで再加熱する調理法です。保管しておける期間は、一次加熱をした日から提供する日を含めて5日間になります。
従来、調理場での食事提供はクックサーブ(提供するタイミングに合わせて当日調理する方式)が主流でした。しかし、クックサーブにはいくつかの課題がありました。
病院や高齢者施設では、
- 様々な形態・種類の食事があるので、作業が煩雑になりやすく安全性の確保が大変であり、2時間以内の喫食が困難
- ピーク時には調理場に余裕がないため、メニューが限定されてしまう
レストランなどでは、
- 料理人の腕によって味にバラつきが出る(バラつかせないためには、特定の料理人を常に勤務させなければならない)
- 時間帯や曜日によって忙しさにバラつきがあり、調理スタッフの配置が難しい
クックチルのメリット(衛生面・効率化)
一方、クックチルは、衛生面と効率化の両方でメリットがあります。まず衛生面では、冷却専用の機械を使って急速冷却することで、食品中に細菌が増殖しやすい60〜10℃の温度帯を短時間で通過させることができます。
次に効率化の面では、ピークではないときに準備しておくことができ、提供の際には最終加熱するだけなので、提供直前の作業時間を大幅に短縮できます。計画的に調理をすることで、調理場での作業の平準化ができ、病院や高齢者施設などではメニューの幅が広がったり、患者様や利用者様によりきめ細かい対応ができるようになったり、スタッフの早朝・土日出勤の緩和などにも繋がっていきます。
そして、レストランなどでは常に特定の料理人が出勤せずとも、いつでも高品質な料理の提供が可能になるのです。
クックチルは食の安全性確保と調理の効率化を実現する
以前、クックチルは「作り置き」だと誤解され、味が落ちるのではないかと不安視されていたこともありました。しかし、技術が進化して急速冷却と衛生的に保管ができるようになった今、きちんと決まりを守って調理すれば、クックチルはむしろ「料理を安全に美味しく保管できる方法」だと言えるでしょう。
食の安全性確保と調理の効率化の2つを実現する方法、それがクックチルなのです。