クックサーブとクックチルとは?
それぞれの特徴を紹介。
これまで経験や勘で運用されていた調理技術や調理場の管理をマニュアル化・システム化することによって、計画的に調理・提供を行う「新調理システム」は、病院・高齢者施設、ホテル・レストランなど、さまざまな調理現場で導入されています。今回は、その中でも“従来調理”と呼ばれる「クックサーブ」と、「クックチル」の特徴について、あらためてご紹介します。
「クックサーブ」と「クックチル」、それぞれの定義は?
「クックサーブ」とは、従来から行われている調理法で、加熱等の調理後すぐに提供する調理システムのことです。調理の流れは、下処理→加熱→提供とシンプルで、出来立て感やシズル感を演出しやすいことが特徴。出来立て熱々を提供できれば、もちろんお客様にも一番喜んでいただける調理法です。
一方で、「クックチル」は、一旦冷却して保存しておく点が「クックサーブ」と異なります。通常通り加熱調理した料理を、30分以内に冷却を開始し、90分以内に中心温度3℃以下まで急速冷却をして、0〜3℃で衛生的に保存しておき、食事を提供するタイミングで最終加熱(再加熱)する調理法なのです。ちなみに、料理を保存しておける期間は、製造日を含め5日間になります。
「クックサーブ」と「クックチル」、それぞれの特徴は?
「クックサーブ」と「クックチル」の2つの調理システムについて、特徴をまとめました。
- クックサーブ
- 加熱調理後すぐに提供できるので、出来立てで温かく、おいしい。
- 作業はピーク時に集中するため、ピーク時に多数の人員は必要。
- 病院・高齢者施設・ホテルなど、提供数の多い大量調理現場では盛り付け作業などを行っている間に料理が冷めてしまい、適温提供が難しくなる場合も。
- 個人の発想やセンス、技術によって、個性的な料理や特徴的な味を生み出しやすい。
- クックチル
- あらかじめ料理を作り、保存しておけるので、提供直前の作業時間が短縮できる。
- ピークではないときに準備しておくことができるので、ピーク時の出勤人数を減らすことができる。
- 調理技術をマニュアル化・システム化することによって、調理技術の格差によって味が変わることを防ぎ、いつでも高品質な料理の提供が可能になる。
- 冷却専用の機械を使って急速冷却することで、食中毒菌が増殖しやすい10〜60℃の温度帯を短時間で通過させることができるなど、温度・時間管理をしっかり行えば安全性も担保できる。
キーワードは「マニュアル化」、2つの調理法をうまく組み合わせよう
「クックチル」は、これまで調理をする個人個人の持つ経験や勘・感性に頼っていた点を、マニュアル化・システム化などの計数管理を行うことによって、業務の平準化・スタッフの負担緩和・安全性の向上などを実現させる手法だと言うことができます。これらは、調理に携わるスタッフにとっても、料理の提供を受ける方にとっても、メリットになるのです。
以前は、作り置きでは鮮度も味も落ちてしまうと考えられていたこともあり、提供前に調理を行う「クックサーブ」が主流でした。しかし、「新調理システム」の技術はどんどん進化しており、今では食事を美味しく安全な状態でキープできる調理法として、さまざまな大量調理現場で「クックチル」を用いた運用が増えてきています。
とはいえ、すべての料理が「クックチル」でまかなえるわけではありません。「クックサーブ」での提供が最良であるメニューや調理現場もあります。そうした場合にも、感覚で行っていた一つひとつの調理工程を「マニュアル化」しておくことで、人によるブレがなく、均質な料理を提供できるようになります。
「クックサーブ」と「クックチル」をうまく組み合わせて、美味しくて安全な料理の提供に努めましょう。