公開日:2017.11.02 最終更新日:2021.09.03
HACCP導入の前に確認しておきたい一般的衛生管理プログラムの落とし穴とは?

近い将来導入が義務化されるのではないかと話題の「HACCP」ですが、HACCPによる食品衛生管理を実施する上で、整備しておかなければならない前提条件として「一般的衛生管理プログラム」があります。今回は、一般的衛生管理プログラムについて内容をおさらいしつつ、意外と見落とされがちなポイントについて紹介します。
HACCPの前提条件となる「一般的衛生管理プログラム」
HACCPを導入して効果的に運用するためにも、まず前提条件として整備せねばならないこととして、「一般的衛生管理プログラム」があります。
一般的衛生管理プログラムとは、調理場やそこで働く従業員の衛生管理、食品取扱者の教育・訓練、各工程の記録の必要性などを明記したものであり、下記10項目によって構成されています。
- 施設の保守点検及び衛生管理
施設設備の衛生状態を良好に維持・管理するために施設内外の清掃や点検等が必要だということ。(照明設備、換気扇、網戸等の清掃なども含む) - 設備及び機械器具の保守点検及び衛生管理
機械器具類は適正な頻度で点検し、常に良好な状態で使用できるようにすること。食品に直接触れる機械器具類は常に衛生的に保持すること。 - 食品等の衛生的取り扱い
原材料の納入業者の衛生管理から始まり、検収・製造・保管までの間、食品は常に衛生的に管理すること。 - 従事者の衛生教育及び衛生管理
衛生管理システムを作っても、従事者が理解し、実践しなければ意味が無い。衛生管理システムが円滑に運用されるように、スタッフが衛生教育や訓練に積極的に参加し、知識を身に付けること。 - 従事者の衛生管理
調理場で働くスタッフは、常に健康管理に留意し、定期的な健康診断の受診及び毎日の健康状態を把握しておくこと。 - そ族・昆虫の防除
そ族・昆虫等から衛生環境を守るため、防虫設備を点検し、発生した際にはそれらの駆除を迅速に実施すること。 - 使用水の衛生管理
遊離残留塩素濃度の適正維持ならびに井戸水を利用している場合は定期的に水質調査をすること。受水槽・貯水槽等の点検・清掃も定期的に実施すること。 - 排水及び廃棄物の衛生管理
排水につまりがないか、スムーズに流れているか、排水の方向が正しいかなどを確認すること。 - 製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検
試験検査の信頼性の保証を行うため、日々点検を行って適切に管理すること。 - 製品の回収方法
不良な製品を万が一出荷してしまった際に備えて、迅速に回収するための手順を定めること。
一般的衛生管理プログラムにおける2つの落とし穴
こうした項目が並ぶ一般的衛生管理プログラムですが、実施される上で特に見落とされがちなことが大きく2つあります。
- 点検・管理の記録が不十分である
プログラムを見るとわかる通り、施設や機器などにまつわるさまざまな点検・管理業務の徹底が必要となります。たとえば、冷蔵庫の温度点検などもそのうちの1つです。こうした点検・管理は普段から実施されている場合が多いものの、正確に記録に残すという点が忘れられがちです。有事の際にどこで問題が発生したかを素早く突き止めるためにも、正確に記録を行うことは必須です。スタッフ1人ひとりが記録を残すことを習慣化できるようなしくみと雰囲気を作りましょう。 - 独りよがりで現場に即していない作業手順書の構築
HACCP導入の際にも通ずることですが、調理場の環境や機器の管理などを見直し、標準作業手順書(SOP)ないし衛生標準作業手順書(SSOP)を作成していく際には、スタッフ皆の協力が不可欠です。調理場によっては、上長が1人で作業手順書を作ってしまったことから、実際に運用するスタッフが作業手順書の意図や各作業の意味を理解できず、運用がうまくいかないといったケースもあります。スタッフに協力を依頼したり、自分たちだけで整備が不十分な点は専門家の手を借りたりしながら、衛生管理のしくみ作りを進めましょう。
システムなども活用しつつ、まずは一般的衛生管理プログラムの実施を
HACCP導入が義務化された際に焦らないためにも、まずは前提である一般的衛生管理プログラムの整備から進めていくことが重要です。
「記録の徹底がむずかしい」といった課題はシステムによる自動化で解決することもあります。また、「手順書を作っているが、リスク管理が網羅できているか不安だ」などと感じられたときは、専門的かつ客観的な目から見たコンサルティング導入することで懸念が解消されます。
一般的衛生管理プログラムの実施にあたりお悩みの方は、ぜひ一度フクシマガリレイにお問い合わせください。