冷凍食品とは。
定義・業界の基準の違いを解説

今や日本の調理現場に欠かせない冷凍食品。新調理システムにおいても“冷凍”は外せないプロセスになっています。その発展のきっかけは1964年の東京オリンピックでした。選手村で供給する食料が膨大で、一気に購入すると一般家庭にも影響を及ぼすことから、「多くの食材を確保して、効率良く食事を提供できるように」と冷凍食品の開発が進んだのです。そんな冷凍食品の定義、そして法律や業界による基準の違いをあらためて解説します。
冷凍食品の定義とは?
基本的に次の4つの条件を満たしたものが、冷凍食品と呼ばれます。
・前処理している
利用者に代わってあらかじめ前処理をしていることが大きな特徴。新鮮な原料を選び、きれいに洗浄したうえで、たとえば魚であれば頭・内臓・骨・ひれなどの食べられない部分を取り除いている。さらに、三枚おろしや切身にしたり、油で揚げるだけで魚フライができるように切身にパン粉をつけたりといった処理が施されている
・急速凍結している
その名前の通り、急速に凍結されていることも大きな特徴。食品の組織が壊れて品質が変わってしまわないように、非常に低い温度で急速凍結している
・適切に包装している
利用者の手元に届くまでに、汚れたり、形くずれしたりすることを防ぐため、包装されている。包装には、取り扱い方や調理方法など、さまざまな情報が表示されている
・品温(食品の温度)-18℃以下で保管している
生産・貯蔵・輸送・配送・販売の各段階を通じて、一貫して-18℃以下に保つよう管理している
冷凍食品の区分とは?
冷凍食品は、冷凍された食品の種類によって、水産冷凍食品・農産冷凍食品・調理冷凍食品・冷凍食肉製品などに区分されます。また、食べる時に加熱が必要か否かによっても、次のように区分されます。
・無加熱摂取冷凍食品:冷凍食品のうち、凍結前の加熱の有無にかかわらず、食べる前に加熱を要しないもののことを指す(例:フローズンケーキ、果実類など)
・生食用冷凍鮮魚介類:冷凍食品のうち、切り身またはむき身にした鮮魚・魚介類のことを指す(例:魚介類の刺身、むき身など)
・加熱後摂取冷凍食品(凍結前未加熱):冷凍食品のうち、凍結前は未加熱または一部加熱済みであり、食べる前に加熱を要するもののことを指す(例:衣をつけたフライ類、餃子など)
・加熱後摂取冷凍食品(凍結前加熱済):冷凍食品のうち、凍結前に加熱済であり、さらに食べる前に加熱を要するもののことを指す(例:フライドポテト、鰻のかば焼きなど)
これらは、それぞれ規格基準、保存方法、包装方法などが定められています。
安全とおいしさに配慮して、業界が定めた保管温度
前述したように、冷凍食品はマイナス18℃以下での保存、流通が要件として定められています。実は、これは業界が定めた「冷凍食品自主的取扱基準」という自主基準であり、食品衛生法で示されているマイナス15℃以下という基準とは異なります。このような違いは、食品衛生法と一般社団法人日本冷凍食品協会、それぞれの考え方から生まれているものです。
- 食品衛生法:食品の安全の観点から、有害微生物が増殖できないマイナス15℃以下を基準と定めている。そのため「おいしさを長期間担保する」という観点での基準ではない
- 一般社団法人日本冷凍食品協会:マイナス18℃以下で保存すれば、約1年間ほぼ元の品質を維持できる上に、細菌の繁殖を抑え、食品の酸化や酵素反応などの変化を抑制できる。そのため、消費の際の品質保持の観点からマイナス18℃以下と設定した。食品の国際規格であるコーデックスにおいてもマイナス18℃以下という保管温度が定められている
つまり、マイナス18℃以下での保存という業界が定めた基準は、十分に品質の安全が担保され、かつ味のおいしさを守るための温度なのです。冷凍食品の技術はもちろんですが、最適な保存基準も研究されてきたからこそ、調理現場や食卓に欠かせない「おいしい冷凍食品」が生まれました。