HACCP導入「7原則12手順」 (手順8)【原則3】管理基準の設定 (手順9)【原則4】モニタリング方法の設定

衛生管理手法であるHACCPは、組織全体で適切に実施することが求められます。その際に役立つのが、HACCPの運営手順をまとめた「7原則12手順」です。
近い将来、HACCPが義務化されても焦らなくていいように、各原則・手順についてきちんと内容を把握しておくことが必要となります。そこで、7原則12手順の詳細をそれぞれ解説しました。本記事では、「(手順8)【原則3】管理基準の設定」「(手順9)【原則4】モニタリング方法の設定」について詳しくまとめています。
CCPを司る管理基準(CL)と基準のモニタリング方法を決める工程
手順8は、手順7で紹介した「必須管理点(Critical Control Point:CCP)」で管理すべき基準を決める工程です。基準とは、たとえば温度や時間などの指標のことで、管理基準(Critical Limit:CL)と言います。
管理基準(CL)とは、製品の安全性を確保できるかできないかの境目の値(限界値)であり、管理基準(CL)から外れるということは、食品の安全性を確保するための管理ができていないということになります。こうした異変はすぐに見つけないといけないため、管理基準(CL)はリアルタイムで確認・判断する必要があります。こうして管理基準に達しているか確認することを「モニタリング」と言い、モニタリング方法やモニタリング結果の記録方法を決めるのが手順9の工程です。
管理基準(CL)の決め方
管理基準(CL)の設定が誤っていると、危害要因の発生に結びついてしまいます。そのため、管理基準(CL)は科学的なデータに基づき、明確に設定することが必要です。
〈管理基準(CL)の要件〉
- 確実に危害が防止できる数値であること(病原微生物であれば、確実に死滅や除去、許容範囲までに低減されていることが確認できる科学的根拠で立証されている数値)
- 可能な限りリアルタイムで判断できること(温度、時間等の物理的な測定値、pH、水分活性等の化学的な測定値、色・臭い・粘度などの指標など)
- 可能な限り連続的に測定でき、かつ自動的に記録して残せるもの
また、実際の製造加工においては、管理基準(CL)よりも厳しい工程管理基準(operation limit:OL)を設けて、安全性が損なわれた製品を出荷・提供しないように細心の注意を払いましょう。
モニタリングに必要なことと記録すべき項目
管理基準(CL)のモニタリング方法は、誰が、何を、どの頻度で、どのように確認するかをあらかじめ詳しく決めておくようにしましょう。
〈モニタリングの要件〉
- モニタリングの責任者を決める
- モニタリングの対象となる項目を明確にする
- モニタリングの方法は、リアルタイムに実施できる、正確な方法を採用する
- モニタリングは、連続的または相当な頻度で行う
- モニタリングの状況をしっかりと記録に残す
モニタリング結果は、工程管理された証拠として、文書記録に残します。主に、下記のような項目で情報をまとめるといいでしょう。
〈モニタリング結果の記録に必要な項目〉
- 作業者氏名
- 品名
- 工程
- 測定項目
- 管理基準
- 測定、観察、検査値
- 製品を特定できる名称及びロットを特定できる記号(ロット名)
- 測定、観察、検査者のサイン
- 記録点検者(責任者)のサイン
- 管理基準逸脱時の措置
モニタリングの記録はHACCPプラン遵守の証でもある
モニタリングした数値を、ただ記録するだけでは危害要因をコントロールすることにはなりません。モニタリングの責任者が、十分な頻度で記録されたデータに目を通す必要があります。
正確な管理基準(CL)とモニタリング方法が確立されていれば、必須管理点(CCP)における管理が不適切な状態になってしまった際に、管理基準からの逸脱として認識し、直ちに改善措置をとることができます。また、モニタリングの記録は、「この製品はしっかりとHACCPプランにしたがって製造しました」という証拠になるので、HACCPプランの検証時にも役立ちます。しっかりと管理、記録を行ってください。
7原則12手順の一覧
- HACCPチームの編成
- 製品説明書の作成
- 用途、対象者の確認(加熱の有無など)
- 製造工程一覧図の作成
- 製造工程図をもとにした現場確認
- 【原則1】危害要因の分析
- 【原則2】必須管理点の設定
- 【原則3】管理基準の設定
- 【原則4】モニタリング方法の設定
- 【原則5】管理基準逸脱時の是正措置の設定
- 【原則6】検証方法の設定
- 【原則7】記録・保管システムの確立
※手順1~5は、原則1~7を進めるための準備となります。